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HOME > 英語とアスリート達 > vol.32 篠宮龍三

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Athletes and English 英語とアスリート達
篠宮龍三
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vol.32 選んだ道にすべてを賭けて

使う道具は、イルカの尾びれのようなモノフィンだけ。我が身ひとつで100mを越える深海へと潜っていくフリーダイビングは、潜水前に肺へと取り込んだ空気をいかに効率良く使えるか、頭と身体の酸素消費をどれだけ抑えながら動けるかという、究極の“燃費”が問われるスポーツだ。地上で計測される身体能力の数値では計ることができないフリーダイビングに対する適性を、当時大学生だった篠宮は自らに感じ取った。それから10余年、彼はいま、憧れだったジャック・マイヨールの記録105mに肩を並べ、さらなる未知の領域へと挑もうとしている。

取材・文 猪狩真一/写真 出町公宏
インタビュー
五感の感覚が消えてしまう世界

photo フリーダイビングというスポーツの存在を知ったのは、大学生の頃、スキューバダイビングを始めた後のことでした。映画の『グラン・ブルー』や(そのモデルになった)ジャック・マイヨールさんの本に出会って、スキューバのように重いタンクを背負って空気を吸いながらではなく、素潜りの状態で深く海に入っていくフリーダイビングに、より競技性やスポーツ性を感じたんですね。

 実際に始めてみると、いままで感じたことのないような、自分にすごく合っているなという感覚がありました。例えば、球技や激しいコンタクトスポーツには闘争心が絶対に必要で、それがあってこそいいパフォーマンスが出せる。でもフリーダイビングの場合は逆に、闘争心を“外して”やらないといけないんです。それは、闘争心や駆け引き、複雑なタクティクスなどを頭に描いてしまうと、そちらに酸素を使ってしまうから。実は脳が、身体のなかで一番酸素を多く使う臓器なんです。

 だからフリーダイビングでは、脳を休ませた状態、できるだけ無に近づいた状態でパフォーマンスをすることが最高の結果につながる。持っていける限られた資源=酸素を、省エネモードでいかに有効に使ってゴールまで帰ってくるか、ということです。スポーツとしては非常に変わってますね。弓道のような日本の武道や、禅の世界といったものに近いところがあります。

 僕は協調性がないので(笑)、チームスポーツはダメだったし、サイドバイサイドで競り合ってのガチンコ勝負というスポーツにも興味がなかった。高校のときも、バンドをやってギターを弾いてましたから(笑)。そういう自分のパーソナリティとフリーダイビングの競技性が合っていたんだと思います。

 泳ぎ始めて最初の30mぐらいまでは、浮力が大きいので、たくさんキックしていかないといけません。でも30mを過ぎると、肺も、ウェットスーツのなかの気泡も潰れてペッタンコになって、浮力がほとんどなくなっていきます。そこから100mまでは、キックをしなくても勢いがついて、フリーフォールのようにスーッと落ちていくだけ――。それが最高に気持ちいいんです。

 深く潜るにつれて光が失われて、海の青がグラデーションで深くなっていく。100mを越えると、ほとんど光の届かない真っ暗闇。光もなく音もなく、重力もほとんど感じられない世界です。五感がすべて閉じている状態で浮かんでいると、そこはもう“海じゃない”んですよね。地球の中心に向かって海の深いところに行っているのに、逆に地球の外、宇宙を漂っているような感じすらするんです。

時間を投じてつかんだ一生の宝

photo 英語は小さい頃から好きでしたが、流暢(りゅうちょう)にしゃべれるという感じではまったくなかったですね。でも、本格的に競技を始めて最初に行った2000年のスイスでのワールドカップのときに「これじゃまずい」と思いました。生命に対してリスキーなスポーツをやっているのに、言ってることがよく分からない。これではもっと危険になるなと。それに、スタッフが自分から楽しんでやっていて大会の雰囲気がすごくいいんですよ。英語ができずにその輪に溶け込めないのは損だぞと(笑)。

 一番大きな勉強の場になったのは、04年にプロになったとき、前から懇意にしてもらっていたハワイの選手のところで3か月修行させてもらったことですね。一緒に練習するときには「自分はこれからこうしたいんだ」ということを言わなければ始まらない。そうやってしゃべらざるを得ない環境に入ってしまうと、脳がフル回転して(笑)、中学英語ではあっても言葉が出てくるようになります。こうしないと生活できないとか、競技に支障が出て自分の生命もリスクにさらされるとか、そういった必要に迫られるというのが(英語の上達には)一番大きいと思いますね。

 僕の場合のフリーダイビングのように、相手と共感できるテーマがあると、気持ちの面でも相手と溶け込んでいけて、英語が怖いといったバリアがなくなっていきます。そうした外国人の友人を作って、話をしたり、メールを書いたりすること。それと、英語のニュースサイトを読んだりとか、英語に触れる時間をなるべく長く作ること。生活のなかにそういう機会を作っていけるといいと思いますね。

人が見えると自分のこともよく見える

photo いま日本で、プロのフリーダイバーは僕ひとりです。選手の多くは仕事をしながら、平日はプールに行き週末は海に通いという生活のなかでトレーニングをしています。ほとんどの大会で賞金は出ませんから、スポンサーを探して、どこに自分の強みがあるのかを認識し、自分から売り込んでいかないといけません。

 プロになる前、5年間会社勤めを続けながらも日本記録を更新できてはいたんですが、その頃の自己ベストは80mほどでした。でも、会社員としての恵まれた経済状況を保ちながらでは、そこからさらにブレイクスルーするための時間はなかった。105mというジャック・マイヨールさんの記録まで自力で潜れたのは、会社を辞めて時間的な資源を思い切り投入できたからだと思います。アジア人として初めてジャックの記録に辿り着いて帰ってこれたことは、自分の一生の宝。どれだけお金を出しても買えないものを時間を投入して得ている、ということですね。

 ジャックが1983年に105mまで行ったのは56歳のとき。すごいと思うのは、76年に人類初の100mを超えてから、さらに7年間続けたことです。100mという記録は、エベレストに初めて登ったのと同じ偉大な記録で、そこでやめてもいいわけですよ。なのに、さらに7年間続けて記録を5m伸ばした。だから僕もいま、プラス5メートルということが意識にあります。110mというジャックが行ったことのない水深がどんなものなのか。ジャックというガイドがいない水深に、自分の力とアイデアとメンタリティで挑んで、なおかつそのプラス5mがどんなものなのかを、自分の言葉で表現したいなと思いますね。


Message-最後に一言!

One Ocean

これは僕の座右の銘というか、メッセージですね。「海はひとつ」というメッセージを発信しながら競技を続けて、いろんなイベントをやりながら、環境保護であったり、コミュニケーションの大事さであったり、さまざまな気付きを作っていければと思っています。
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プロフィール
photo

篠宮龍三(しのみや・りゅうぞう)
プロフリーダイバー。1976年11月11日生まれ、埼玉県出身。大学時代にフリーダイビングに出会い、大学卒業後は会社員として働きながら競技を続ける。その後、2004年に会社を辞め、国内唯一のプロ選手として競技に専念。06年のCOUPE DES CALANQUES 2006 FRANCE総合優勝、07年の世界選手権・個人戦スタティック種目決勝5位、08年のEGYPT PRECHALLENGE 2008スタティック種目優勝など、さまざまな国際大会で実績を挙げる。08年にはコンスタント種目で101mをマークし、アジア人として初の素潜り水深100m越えを達成。09年にはさらに105mをマークし、世界のトップフリーダイバーとして記録を更新し続けている。

Ryuzo SHINOMIYA Official Website
ONE OCEAN OFFICIAL WEBSITE

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