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Athletes and English 英語とアスリート達
平林 岳
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vol.29 信じた道を貫いて

野球選手になりたいという夢を抱いていた少年は、その夢の実現が難しいことに気付いたとき、新たな目標を見出した。それが、プロ野球の審判という職業だった。草野球の審判を1日に何試合もこなし、経験を積み重ねた大学時代。裸眼の視力不足から日本での審判をあきらめて海を渡った、一度目のアメリカ時代。そして、多少の回り道を経ながらも、平林はパ・リーグ審判員という目標に辿り着く。だが、いつしか彼の心に湧いてきたのは、再びアメリカで審判をしたいという想いだった。

取材・文 猪狩真一/写真 出町公宏
インタビュー
選手以外で唯一の、グラウンドに立てる存在
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 審判になろうと考えるようになったのは中学2年生のときです。小学生の頃から、野球選手になりたいと思って野球をやっていたんですが、中学の同級生に非常に上手な子がいて。その子は実際、有名な強豪校にスカウトされて甲子園にも行ったんですが、彼と一緒にやっているうちに、「自分には(プロでやれるような)力はないんじゃないかな」と思うようになったんですね。

 それでも将来は、野球の仕事でメシを食っていきたい。そう思いながらテレビの野球中継を見ると、グラウンドには選手以外の人間は審判しかいないんです。「これだ」と思って、審判についていろいろと調べるようになって。

 高校までは野球を続けて、大学に入ってからは、学校にも行かずに草野球の審判を毎日のようにやってました。神宮の軟式野球場は6面あるんですけど、当時は平日でもけっこう草野球の試合が行われていて、1日何試合も審判ができたんです。1試合3000円とかお金ももらえて小遣い稼ぎにもなりましたし、そうして、審判をするのってやっぱり楽しいなと思うようになっていって。

 一生懸命正しく見よう、正しく判定しようと努力して、判定したことに対してみんなが従っていく。そういうやりがいもありますし、プロでやっているいまは、責任の重さも感じます。例えば、何億も稼いでいる選手に、ひとこと「退場!」と言えば、その選手は出られなくなるわけですから。変な言い方ですが、それぐらいの権力を持たされていることに、やりがいとものすごく大きな責任を感じますね。

ボキャブラリーを増やすことの重要性

photo 92年にアメリカの審判学校に入ったんですが、当時は英語は全然分かりませんでした。学生時代、英語の勉強は大嫌いで、大学も推薦入試だったので受験勉強もあまりしていなかったんですね。ただ運良く、日本のパ・リーグの審判の方が研修にきていたこともあって、学校が通訳をつけてくれたので助かりました。

 でも5週間の授業が終わって、選手や審判を育成するための教育リーグに行くと、もう周りに日本語を話せる人がひとりもいない。そこでアメリカ人の仲間から、現場で必要な言葉や、こういうときに何と言うのかといったことをひとつずつ教えてもらって。その2か月で、それこそゼロだったものが30ぐらいまで伸びました。

 だけど、その後が伸びないんですよ。そのときは2シーズン審判をしたんですが、野球のシーズンは半年なので、残りの半年は日本に帰る。たぶん原因はそれだと思うんです。ちょっとずつ良くなっても、半年経つとまたイチからになる。それは、05年からまたアメリカで審判をするようになってからも変わらない悩みですね。

 プレー中に審判として対応しなきゃいけないことは問題ないんです。それよりもっと一般的なこと、例えば世間話のようなことを急に選手から話しかけられたりすると、「エッ?」となってしまうことがある。ずっと一緒に行動している審判仲間とでも、ネイティブ同士で話が進んでいるなかに入っていくのは難しいです。

 ドミニカ人のサミー・ソーサのお父さんがどこかのチームでコーチをしているときに会ったことがあったんですが、彼に「どうやって英語を勉強したの?」と訊いたら、「テレビをずっと見てれば分かるようになるよ」と。それからテレビや好きなドラマのDVDを見るようにして、聴く方はかなりできてきてます。それでも分からないことがあるのは、ボキャブラリーが不足してるからでしょうね。

 僕の場合、何度も読んだり見たり書いたりして、頑張って単語の数を増やしていくことが必要なのかなと。文法を勉強したり、聴く量を増やしたりすることはもちろん大切ですが、ボキャブラリーを増やすのも絶対に必要なことだと思いますね。

背中を押してくれた思わぬひとこと
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 94年にパ・リーグの審判になったんですが、3年、4年と経つうちに、日本とアメリカの野球の環境が違うことにだんだん気付いていきました。そして、自分がしたい審判の理想は、どう考えてもアメリカの方だなと思うようになったんです。

 例えば、判定に不満を持った選手が審判に暴行するようなことがあると、アメリカでは、1年間の出場停止といった重い処分が下されます。審判は、コミッショナーの代理として試合を裁く者として常に守られている。でも日本では、同じことがあっても出場停止1日とか、何の処分もなかったりする。それは、コミッショナーやリーグ会長より球団の方が力が強いから。僕らは別に威張りたいわけじゃないんですが、現場では、彼らの上にいて裁く立場でないと仕事がやりにくいんですよ。

 でも家族がいますから、自分から「アメリカで審判をしたい」とは言えませんでした。そんなとき、嫁が病気をして初めて入院したんです。そこで死というものを考えたんでしょうね。僕に向かって、「やりたいことをやらずに死んでしまったら絶対に悔いが残る。お父さん、何かやりたいことがあったらやった方がいいんじゃないの?」って言ってくれたんです。審判学校時代の同期の連中が出てるよ、なんてことを言いながらメジャーリーグの中継を見ている僕を見て、きっとまたアメリカでやりたいんだろうなって思ってくれてたんだと思います。

 パ・リーグの審判を辞めてアメリカに行って、今年が5シーズン目です。日程の組み方は日本より全然厳しいし、600マイル(約960キロ)を一晩休みなしに運転しなきゃいけないような移動も当たり前にある。家族と離れて暮らさなければいけないことも大変です。でも、審判をするということに関しては、本当に楽しくやらせてもらってます。メジャーリーグで審判をするという夢もありますから。

 いま、日本人の選手たちが活躍してくれているおかげで、メジャーにも日本人の審判が必要だという風潮が高まってきてるんです。アメリカはバランスや体裁を大事にする社会ですから、アジアの選手がいるならアジアの審判も入れようと。運も実力のうちって言いますけど、何か引き寄せてくれるものがあるのかなと。だから、アメリカに行って良かったと思うし、先が楽しみでしょうがないんですよ。


Message-最後に一言!

Enjoy baseball,and enjoy umpiring

野球をやっている人や審判をしている人にいつも書いてあげる言葉です。仕事でもそうですけど、楽しんでやらないと自分の持ってる能力は発揮できない。僕も日本で審判をしているときは、プレッシャーの方が強くて楽しめていませんでした。でもアメリカは、のびのびと自分のやりたいようにやれる環境なんです。アメリカの選手を見ていると、すごく大事な試合であってもやっぱり楽しめてますからね。
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プロフィール
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平林 岳(ひらばやし・たけし)
プロ野球審判。1966年3月1日生まれ、兵庫県出身。小学生で野球を始め、千葉・柏高校時代まで選手としてプレー。國學院大学に進学後、審判として実践を積む。大学卒業後、セ・リーグ、パ・リーグの審判員試験を受験するが、裸眼での視力不足などが理由で不採用に。92年に渡米し、ジム・エバンス審判学校に入学。トップ10に入る好成績を挙げ、日本人初のアメリカ・プロ野球審判となる。ルーキーリーグ、1Aリーグで審判員を務めた後、93年にパ・リーグからスカウトされ、02年までの9年間、パ・リーグ審判員として活躍。03年1月、メジャーリーグの審判を目指すべく、再度ジム・エバンス審判学校に入学。05年にマイナーリーグの審判員となり、06年〜07年は1A、08年は2Aと、着実に階段を登っている。

平林岳オフィシャルブログ 「オールドルーキーチャレンジ日記」

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