アメリカにいるころは、毎週のようにレスリングの試合がありました。それまで私は父とマンツーマンでレスリングをやってきたので、初めてチームで一丸となって試合に挑むということの楽しさを知りました。初めての女子部員にコーチも戸惑いながらも、女子だから、留学生だからと特別視はせずに、男子部員たちと平等に扱ってくれたのがうれしかったですね。
ある日の試合で、私は1ラウンド、2ラウンド共に負けてしまい、もう後がないところまで追い込まれていました。日本では負けたことのない私でしたから、負けた自分を受け入れられず、その時はもう半ベソ状態!
でも、コーチの「絶対に次のラウンドは勝てる」という言葉を信じて、次のラウンドに挑んだら、なんと逆転勝ちしたんです。試合後、コーチに言われました。「勝つときもあれば、負けるときもあるんだ。そこからどうするかが大切なのだ」と。「たとえ負けたとしても、周りにあるすべてのものは何も変わらない。一晩寝て起きれば、ベッドはそこにあるし、ペットの猫もそこにいる。すべて昨日と同じだ」。その言葉を聞いて、肩の力がすっと抜けていくのを感じました。気持ちが楽になれたんです。日本のスポーツ界には、勝つことが当たり前で負けは認められない空気があるんです。強くなっていくとなおさらその空気は厳しく感じられます。でも、アメリカでは違った。レスリングに対する姿勢、物の考え方が、コーチによって変わった瞬間でしたね。私にとって、コーチとの出会いは本当に大きなものでした。
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